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斜光に包まれながら



スタイリストからそのキャリアをスタートさせ、カメラマン、DJ、ブランドのプロデュースなど広範囲に渡り八面六臂の活動を続ける熊谷隆志。実は、撮影スタジオ、コスタメサスタジオのオーナーという一面も持つ。そんな彼がスタジオに求める条件とは何か?

彼ならではの視点を伺い知ることができ、さらに彼の今後の動きを示唆する内容を含む貴重なインタビュー




大震災直後の午後、日本全国が混乱に包まれている最中にこのインタビューは行われた。聞けば、急遽、熊谷が発案し、仲間のスタイリストに声を掛けて催したチャリティ・フリーマーケットが2日で680万円という売り上げになり、それを被災地に全額寄付したという。その発想力、そして行動力にはいつも舌を巻いてばかりだ。

スタイリストとしてもカメラマンとしても、熊谷隆志の仕事は早い。あっという間に服をセレクトし、シャッターを切り終える。打ち合わせも簡潔だ。それは彼の中にブレないものが1本通っているからに違いない。彼が「良し(あるいは美)」とする尺度に沿って物事を進めれば、自ずと道が開ける。そして、それは撮影スタジオに関しても同様らしい。

熊谷隆志の言葉には澱みがない。彼の見つめる先には新たなビジョンがある。多彩かつ多方面に渡る活動は、有機的に結びつき合いながら、そのビジョンに向かって収斂して行く。



青葉台コスタメサスタジオ

——カメラマンが撮影スタジオを所有しているケースは珍しくないですが、こういったスタイルのスタジオを展開し、オープンにしているケースはあまりないと思います。どういった経緯でスタジオを始められたのですか?

僕はずっとフィルムで撮ってきましたが、一部の撮影スタジオではデジタル主体で広告の写真を撮っている人との関係が密になるにしたがって、彼らにとって撮りやすい状況になってきていたんです。それは、僕にとってあまり嬉しいことではありませんでした。フィルムの人は、たまにしかスタジオを使用しないので疎外感を感じるんです。もちろん、アットホームな雰囲気のスタジオもありますけど。そこで、「それなら自分で作った方が早い」と思って、5年前に、僕の事務所の上の階でスタジオを始めました。それが青葉台コスタメサスタジオです。

——どのようなコンセプトで作られたのでしょう。

基本、僕は自然光で撮るので、白ホリがあって、みんながリラックスできるスペースがあって、ということですね。海外に撮影に行くとラフなスタジオってあるじゃないですか、NYのソーホーやパリのような。そんなイメージのスタジオを自分で作ろうと思いました。

——でも、国内には、なかなかそういった条件を満たす物件ってないのでは?

僕は不動産物件マニアなんですよ。ずっと面白い一軒家に移り住んで来たし、人からもいい物件がないかよく訊かれるんです。だから、常に情報は入ってくるようになっています。 スタジオに関しては、天井を抜くことができることが大前提です。天井高が2m40cmを超えないとウズウズして来ないんですよ。それと、青葉台の活性化を考えているので、この辺り(青葉台)で、歩いて行ける物件は見に行くようにしています。

——青葉台が好きなんですね。

はい。目黒川沿いの桜もキレイだし、庶民的な感じがするんだけどmoussy(マウジー 渋谷109などで人気のブランド)のオフィスがあったりして、超ギャルたちがコンビニに集まっているような状況がすごくいいです。美味しい中華料理の店などが点在していて、ランチも夜も困らないし、クルマも停めやすく、どこに行くにも便利。青葉台、最高ですよ。

——では、このスタジオの特筆すべきポイントは何でしょうか。

僕はトップ(からの光)があまり好きではないので、サイド光が入ることが重要です。柔らかい光が入るよう工夫しています。 あとは、インテリア。僕はインテリア蒐集が趣味で、自宅に入り切らない分をスタジオに置いていますが、そういったものが撮影の時に役立ちます。

——ということは、あなたがスタジオに求める要素は全てここにあるということですね?

そうですね。ただ、面白いのは、他のカメラマンがこのスタジオで撮影した写真を観ると、自分とは違った使い方をしていることに気づくんです。「ああ、こういう撮り方もあるんだ」って。

——カメラマン、スタイリスト、ブランドのプロデュースをはじめ、さまざまな活動を続けている熊谷さんですが、今後はどういった方向に進んで行くのでしょうか?

今、少しずつ名乗っているのですが、「ライフスタイリスト」と「ランドスケープスタイリスト」という新しいジャンルを作ろうと思っています。これからは、生活もスタイリングして行った方がいいんじゃないかと。これまでの経験を活かして、不動産物件からインテリア、エクステリアも含むパッケージで提案することを、徐々にですが、仕事にして行こうと考えています。実際、すでに進行中の植栽のプロジェクトもありますし、構想はそれこそ沢山あるんです。





優しい斜光を活かした写真。目黒川コスタメサスタジオにて
撮影/熊谷隆志

青葉台コスタメサスタジオ。家具や照明も豊富

熊谷隆志 TAKASHI KUMAGAI


1970年生まれ。
渡仏後、1994年 スタイリストとして活動開始。
1998年 フォトグラファーとして広告・雑誌等で活動する傍ら、 様々なファッションブランドのブランディングやSHOP内装のディレクションなど 幅広い分野で活動中。