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光の赴くままに



前回の熊谷隆志氏から、次なる人物を紹介をしてもらった際、真っ先に名が挙がった深水敬介氏。 「カメラマンとしてリスペクトしています」と熊谷氏に言わしめた人物だが、元はJFKKという名でも仕事をしていた彼についての事前情報は一切手に入らず……。しかし、仕事のオファーは引きも切らない深水氏。一体どんな人物で、どんな写真を撮るのだろうか。




アールスタジオのオフィス(東京R不動産とシェア)に訪れた深水氏は、開口一番こう言った。
「このオフィス、最高ですね」
窓からは自然光がなみなみと降り注ぎ、大きな空が見える。すぐそばには竹下通り。しかし、原宿とは思えない喧噪とは無縁の静かな環境―—そんな空間の持つ独特のニュアンスを瞬時に見てとったのだろう。
まず、私たちに見せてくれたのは、分厚い革表紙のポートフォリオ。その中には、ジャンルレスな写真がたくさん散りばめられていた。 深水氏の写真を見ると、人物であれ、洋服であれ、風景であれ、被写体を取り巻く空気に予め内包された「ある瞬間」を撮っている。
モデルの時折見せるであろう、ふとした表情、やわらかな光に包まれた旅先のどこか見たことのある風景……そんな何気ない景色を切り取る彼の写真は、いわゆるファッションフォト=モード系なイメージとは、かけ離れていた。
しかし彼は、ファッション=時代という意味で捉えれば、すべてファッションフォトなのだと思うと言う。 「かっこいい写真であればいいんです」と……




——このブック、かなり年季が入っていますね。名前も入っているし、特注品ですか?

「house of portfolios」というNYの会社のものなんです。NYに住んでいた時に作りました。当時NYのカメラマンはだいたい、紙焼きをこれに挟んでブックにしていましたね。オーダーでつくってもらうので、名前を表紙に刻印してもらえるんですよ。

——NYでカメラマンとしてスタートされたんですか?

NYで絵を描く学校にまず入ったんです。写真をやりたくて、ロケアシ(ロケーションアシスタント)で稼ぎを得つつ、作品を売り込みに行きました。NYの出版社やエージェンシーに行ったりしましたね。NYでは4年弱くらいやって、東京に初めて出てきました。

——東京で仕事をすることになったきっかけは?

一番始めにやったのは『装苑』だったかなぁ。そこからちょっとずつ2~3年かけて徐々に増えていった感じですね。

——どうして「ファッション」だったのですか?

もともと、洋服が好きだったっていうのもありますけど、人物を撮るものでも、ページの扱いが大きいものであれば、「ファッションフォト」だと思っていて(笑)。何がファッションか今でもわかりませんが、極端な話、かっこいいものであれば、風景でも、「ファッションだ」と思ってたんですね。 自分の中では、洋服だけに限らず、ファッション=時代感ということなんで。

——いわゆるファッション雑誌の写真というと、いわゆるモード系な、かっこいいものが多いイメージですが、深水さんの写真はとんがってなくて、やわらかい印象ですね。

パッと見た時に、簡単に見えるものじゃないと自分の写真じゃないというか。モード写真っていうのは小難しすぎて、いろいろやった跡が一枚の写真の中に入りすぎている。そういう写真をクールだとは思わないんですよね。自分が撮りたいと思う写真の世界は、もっと平べったいというか、難しいことが画面に残ってないものがいいなと常に思うので。

——軽くシャッターを押したような、そんな雰囲気も感じます。

きっと自分の撮ってる写真はいわゆる「ファッションフォト」ではないのかもしれません。洋服はほとんど気にしていない、目がいってないんでね。最近常々思うんですけど、ファッション誌といわれるものって自分には向いていないんじゃないかと思って(笑)。取材とか人物とか、風景を撮りたいです。たとえば、このコップをつくっている人と、そのまわりにある空気とかを撮ること。純粋に写真を撮ることが好きで、「ファッションフォト」だと勝手に思い込んできたけれど、憧れてきたものは「ファッションフォト」じゃないのかもしれないなって。

——いろいろ見せていただきましたが、思い出深い仕事などあれば。

『ポラリス』っていうバンドのCDジャケット写真でしょうか。風景だけでやりたいということで、担当者の方からお話をもらって。PVも撮ってくれということで、8mmで一緒に撮りました。

——こういう場合、たくさんある風景の中から、どういう過程を経て撮られるのですか?

まず、曲を聴きながらイメージをふくらませていくんですけど、曲を聴く場所やタイミングによって感じ方って違うじゃないですか。ヘッドフォンで聞きながら歩いたり、車の中や電車で聞いたりだとか。そういう時にふとリンクする場面があるんですよ。ぜんぜん音しか聞こえてない時もあれば、電車でちょっと景色が開けた時にパッと見えた空気が抜けた風景とか、夕暮れの景色とリンクしたりだとか。聞きながら過ごしている中で、自分が感じる瞬間に写真を撮るだけなんです。明確なイメージがあるわけではないですね。

——ジャケットとPV、どちらも撮るという意味では一緒ですか?

一緒ですね。これは、自分で撮って、編集までしたんですけど、違うPVの時は監督だけやって、カメラはやらなかったり。だから、スチールのカメラマンは、監督業もカメラを同時に1人でやってるようなもんで、自分の頭の中に描いたものを自分で撮るだけで。このPVはあくまでイメージなので、それこそ8ペ―ジのファッションページの流れをつくるのと対して変わらないんです。

——(ポートフォリオを拝見するところ)やはりロケがお好きなんですか?

スタジオの撮影もあるんですけど、やっぱり空気感みたいなものが撮れるロケが好きですね。その空間に立った時に、その人の気持ちが上がったり下がったり、そういうのも含めて撮れますから。白ホリのスタジオ以外は、自分の中では、ロケなんです。ハウス(スタジオ)とかは、シチュエーションがつくりやすい。やわらかい光だとか、沈んだ感じの光が好きなので、ハウススタジオで撮影するのは好きですね。

——お気に入りのスタジオはありますか?

熊谷さんのコスタメサも好きですし、ジャンティーク秋谷もいい。パイプライン戸越や十里木の大きいリビングルームに入ってくる、光の感じが好きですね。これらに共通して言えるのは、光がいいってことかな。

※参考



——やっぱり「光」ありきなんですね。

カメラマンはみんなそうだと思いますね。光によってぜんぜん見え方は違ってきますから。いろんなカメラマンが同じスタジオで日々撮っていてもできるものは違います。究極的に言えば、撮る人と撮られる人が違えば、毎日同じところで撮ってもいいんです。毎日光は違うわけですから。


Poraris CDジャケット

ROSA’s secret closet カタログ

rottweiler photobook

深水敬介 KEISUKE FUKAMIZU


1971年 三重県に生まれる  NYから帰国後東京にて活動。